フルバリネート抵抗性ダニへの対策

これ以上抵抗性を強めず、できるだけ早くフルバリネートの効力を回復するために

  1. アピスタンや農薬マブリックの使用を 3 年程度控える。ダニ類は容易に薬剤抵抗性を獲得するが、その消失も意外に早い。一定期間使用を控えれば効力を回復する。
    アピスタンとマブリックは同じ有効成分フルバリネートであり、片方が効かなければどちらも効かない。
  2. 新薬アピバール(有効成分アミトラズ=農薬ダニカット)は、不評が伝えられたが、高温多湿の夏期を避けて投薬すればある程度の効果が期待できる。
  3. ダニカットは乳剤であって、担体が乾けば効果がなく、段ボールや麻袋片を半乾燥状態にして使っても、有蓋巣房から蜂と共に出てくるダニを駆除するまで効果が持続しない。一歩間違って濡れた状態で投与すれば、成蜂の大量死につながる。またこの薬剤の乱用は、同じ有効成分のアピバールの有効性を低下させる可能性がある。
  4. チモールなどのエッセンシャルオイルはダニに抵抗力を獲得させる恐れはないが、一回の投与では充分な効力が現れない。繰り返し投与する必要がある。気温が 10℃〜20℃程度の時が投与し易い。他の駆除剤と同様、育児圏が無いかできるだけ少ないとき。養成群の完成後(新女王産卵開始から1週間以内などは最適。)
    しっかり保温して蜂球を作らせないような状態にすれば、真冬でも使用できる。
  5. 抵抗性ダニが蔓延しないように、基本にもどった作業にこころがける。
    合同、蜂児枠の差し替えは必要最小限度にとどめる。特にダニが原因で衰退した群を健康群に合同することは問題がある。かえってダニを全体に拡げることになる。
  6. 物理的な駆除方法を応用する。
    ① 落下ダニトラップ法
    粘着シートかワセリン・植物性オイル=マーガリンなどでもよい。
    ② 雄蜂産卵時期には、雄蜂巣礎を利用してメスダニを誘い込み、有蓋状態の間に
    蓋を切ってさなぎを振り出す。
  7. ダニの寄生状態をモニタリングして、駆除が必要かどうかを判断する。
    不必要な薬剤投与はダニに抵抗性を早く獲得させることにつながる。
    ① 複数以上の駆除剤と粘着シートの組み合わせによる方法。
    ② 成蜂 1 定量を採取して、食塩水やエタノール中に浸し、落下ダニを確認する。
    ③ シュガーロール法
    蜂を犠牲にせずサンプリングできる。一定量の蜂を瓶の中で粉砂糖とともに振るうとダニは蜂の体から離れる。広い容器にぶちまければ、白い粉砂糖のなかでダニはよく見える。駆除法としても有効。

フルバリネート抵抗性ダニ参考資料

 アピスタンのメーカー・Vita Europe 社 HP 内、Monitoring Varroa Resistance の要旨とグラフ抜粋
1990 年代半ば以来、ピレスロイド系殺ダニ剤フルバリネート(アピスタン・マブリック)は世界各地でその効力についてのクレームが相次いだが、野外における再寄生や誤った投与法による結果である可能性も考慮されて、その実態は明らかではなかったが、1994 年、Vita 社はイタリア Udine 大学開発の手法をもって、Varroa(ヘギイタダニ)のフルバリネート抵抗性に関する試験を実施した。(以下一連の試験データ要約のグラフ化)

グラフ① 感受性及び抵抗性系統ダニのフルバリネート感受性試験(実験室内標準値)

LC50(接触による 50%死に達する濃度)は, 感受性系統 25PPM, 抵抗性ダニ 9000PPM

グラフ② 野外での薬剤効果と実験室内での効力との関連を表す。 実験室内で 60%効力は野外の 85%に相当して、実験室内でいち早く薬剤効力の減退を確認できることを示す。

 ピレスロイド系薬剤抵抗性ダニの増殖は、薬剤感受性系統よりも遅いことが知られている。
したがって、ピレスロイド系薬剤(アピスタン・マブリック・バイバロール・フルメトリン)などを一定期間休薬することで、感受性ダニのほうが増えてくるのでまた効力を回復してくる。
 そのためには、同系統の薬剤を同時にすべて休まなければならない。交差耐性と言う現象で、通常どの薬剤にも共通して抵抗性を獲得するからである。

グラフ③ 隔離養蜂場におけるピレスロイド系薬剤の休薬テスト
テスト開始時の抵抗性ダニ;50%、2 年後 8%(野外での駆除率 96%に相当)

薬剤抵抗性ダニの発生機序(図解

【寄生群への殺ダニ剤投与】
薬剤感受性ダニ 99%駆除

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