シュウ酸を用いたヘギイタダニ駆除の特徴
最も効果的・省力的・経済的な投与の方法とタイミングがあります。そのためにシュウ酸の性質とダニの寄生生理を充分に理解する必要があります。シュウ酸を糖液に混ぜ滴下するものと、熱で昇華させ噴霧する2種類の投薬方法があります。
長所○
○ 薬剤耐性系統のダニがいない (化学合成のダニ駆除剤との違い/成蜂に寄生するダニの90%を駆除)
○ 即効性で翌日には底板に落ちている (蜂の体内濃度は12時間後に最高値)
○ 天然蜂蜜にも含まれる(1〜800mg/Kg)ため残留基準値が設定されない。蜂蜜への残留も少ない。
○ 蜂への安全性が高い(2.8%シュウ酸+糖液スプレーテストでダニの6倍耐える結果)
※投与3日後;ダニLD50(半数致死)=1.29ml/蜂1000匹 ミツバチLD50(半数致死)=7.97ml/蜂1000匹
○ 弱小群にも安全(蟻酸やチモール剤との違い)、オーガニック(有機)薬剤である。
欠点×
× 無味無臭の指定劇物であり、取扱いと駆除作業は要注意。
特に噴霧法の作業は吸引の危険性があるため、ゴーグル・防毒マスクを着用して作業すること。
× 効力の持続期間が短い(約48時間)、成蜂寄生のダニしか駆除できない。※卵にはチモール等と併用
噴霧法と糖液法の比較
噴霧法 | 糖液法 | 備考 | |
投薬作業時間 | 多数の養成群は不向き時間がかかる※ | 継箱を降ろす必要あり多数養成群へ投与に適 | ※与熱時間が必要 |
薬剤量・費用 | 最少量の原末で有効最も経済的 | 調剤に手間がかかる使用量も多い | |
投薬機器の費用 | 蜂に安全な機器は高価(温度調節機能など) | 安価(蜜蜂用の特製) | 安価な噴霧器は要注意 (温度・作業性) |
投薬対象群※ | 採蜜群には最適多数の養成群蜂場ではタイムロスが大きい | 割り出し群・養成群を最速で処置できる | ※有蓋蜂児が無い群の1回投与が理想 |
人への安全性 | 吸入する危険性防毒マスク着用 | 吸入の危険性無し 誤飲に要注意※ | ※冷所保存が望まれるため |
蜂への安全性 | 安全短期間の連続投与も可 | 1回投与は安全2回目は間隔を置くその間他剤を併用 |
投与方法
- 噴霧法(熱で昇華させる)
110V・210V・12Vバッテリー対応の専用噴霧器がある。
器械は高価だが、シュウ酸使用量は最少(2g/群)で経済的。蜂への安全性が高い。
インバーター付きの装置は高価ではあるが、連続投与しても蜂にはほとんど影響が無い。
作業時間が長く、数多い養成群には不向き。継箱を降ろさず使用可能で採蜜用継箱群の駆除に適す。
- 糖液滴下法
溶解したシュウ酸が効くので結晶は無効。駆除率は相対湿度75%で最大。
蜂は溶解糖液を舐めないが、短期間の3回以上の連続投与は薬害が出る可能性あり。
安価で便利な投薬容器あり。割り出し養成群の駆除に最適。
投与のタイミング
有蓋蜂児が無い時に1回投与するのがベスト
- 冬、産卵停止21日以降(蜂球を作らないように断熱材で保温した上で投与)
- 越冬明けの産卵開始後8日以内(封蓋する前)
- 群の割り出しから3週以後〜4週以内(有蓋蜂児が無い期間)
※変成王台→出房(7〜10日)→交尾(7〜10日)→産卵開始→封蓋(8日)
- 人工養成王台の挿入は割り出し7日以降。
- 元群から全ての有蓋蜂児を割り出し群へ移し、元群には即日シュウ酸投与。
- 産卵制限:2週間の女王蜂隔離後21日以降に投与。