農POフィルムと花粉交配用ミツバチについて
農業用ハウスの被覆材として長年使われてきた塩化ビニール製フィルム(農ビ)は、「ポリオレフィン系特殊フィルム」(農PO)へ取って変わられました。
軽く丈夫でべとつかず取扱いが容易で、伸縮が小さくハウスバンドが不要、耐久性にも優れ、塩素を含まず焼却時にダイオキシンを発生させない、可塑剤が使われていないため環境ホルモンを出さないなど、良いことずくめの優れた特徴を備えているためです。
平成20年に29%あったシェアは現在、ほとんどが農POに置き換わっています。
しかし、花粉交配用ミツバチは、従来の農ビハウスと比べて農POのハウスでは蜂の寿命が短くなり、特に張り替えた年に蜂減りが激しい傾向があります。
蜂の多くは方向感覚を失い、巣に帰れることができずに地表に落ちて死んでしまいます。
ミツバチは人には見えない波長300~400ナノメーターの光(紫外線領域)を最も強く感知して、太陽と花と巣箱の位置関係を知ることができます。農POフィルムにも、この領域のUVをカットした製品があり、普通品と同じ商品名が付けられて販売されています。ミツバチへの影響に認識が無いまま無差別に販売されることもあるようで、注意が必要です。10数社が数多くの農PO製品を販売していながら、ミツバチへの影響について言及してある製品は少数です。各製品のUVチャートがネット上で照会できるので、購入前に確認しておくと良いでしょう。そのような情報開示の無いメーカーの製品は、購入しない方が無難です。
もう一つ問題があります。農ビには坊曇剤・防露剤が添加されていますが、農POでは分解消失が早いため、表面加工(コーテイング)してあります。
そのため入射光が屈折・散乱してミツバチの定位飛行に影響している可能性もあります。保温強化剤が添加されて透明度が低い製品が多いものの、透明度と光の透過性には関連が無いそうで、光の透過性はむしろ農POの方が高いと言われます。ガラス温室の例で明らかなように、光の透過性が高いハウスでは、ミツバチはフィルムを通過できると誤認識して外へ出ようともがいて消耗する結果、多くが斃れてしまいます。
イチゴは長期間栽培されるようになりました。そのため、途中で蜂がいなくなり、再度蜂群を購入しなければならないケースが多くなっています。農POの被覆材の影響は否定できませんが、現状はすでにほとんど農POに置き換わっています。
適切な選択のために、販売店・メーカーなどとよく相談されることをお勧めします。
問題の無い製品もあります。